この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
頭部CTにより慢性硬膜下血腫が認められた患者さん(女性)が、穿孔洗浄術を受けたところ、翌朝意識レベルが低下したため頭部CT検査を実施したところ左側に急性硬膜下血腫が認められたため開頭血腫除去術を受けたものの意識は戻らず、約10日後に亡くなられたという事案で、病院からの説明では、非常にまれな機序(発生のメカニズム)で急速に血腫が生じたもので手の打ちようがなかった旨の説明を受けたが、本当に病院に責任は無いのか調べて欲しいということでご相談を受けました。
解決への流れ
病院からの説明では、非常に稀な機序で急速に血腫が形成されたとのことでしたので同じ様な機序での急性硬膜下血腫の発症を調べたところ、論文での報告が数例見つかるだけでした。しかしながら、診療録を精査したところ病院の説明する機序では説明がつかない事実が散見されたため、病院の説明とは異なる機序で硬膜下血腫がある程度時間をかけて形成されたのではないかと考えました。そこで、当職の考える機序が医学的に見て妥当か、本件事案では病院の説明する機序と比べてより合理的といえるかなどについて、複数の脳外科医と面談して意見をもらいました。その上で損害賠償請求を行ったところ、当職の考える機序を前提に病院側が過失を認め、請求額の満額に近い額で裁判外の和解が成立しました。
本件事案は、当初病院が説明していた機序とは異なる機序を当職から示したところ、その主張を病院側も全面的に認め、ご遺族も納得できる内容での和解となりました。医療の現場では、なぜこのような事態が発生したのか、その原因が結局わからないこともありますが、今回は診療録をつぶさに検討し、病院の説明よりも説得的な機序を構築し、主張できたことが決め手であったと思います。