犯罪・刑事事件の解決事例
#不当解雇 . #労働条件・人事異動

【会社の金を着服した従業員に対する解雇・刑事告訴・損害賠償請求の各方法】

Lawyer Image
中村 浩士 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人シティ総合法律事務所
所在地北海道 札幌市中央区

この事例の依頼主

50代 男性

相談前の状況

取引先から売掛金を回収していたにもかかわらず、未入金であると嘘を付いて回収金を着服したり、商品を質屋で換金するなどの行為を繰り返していた従業員がおり、約2000万円の使途不明金が発生していることが判明したとの相談が会社社長からなされ、従業員の解雇・業務上横領による刑事告訴・損害賠償請求の各手続について依頼を受け、受任しました。

解決への流れ

まず、抜き打ちで会社を訪れ、当該従業員のパソコンを押収し、本人の同意を得て、机の中一切を確認し、横領に関連する可能性のあるやり取り一切に関する証拠を確保しました。その上で、調査が終了するまでの出勤を禁じる措置を講じ、弁護士において当該従業員から事情聴取を実施しました。横領行為の細部までの記憶を有していないものの、事実関係を概ね認めたことから、その供述を録取した陳述書を作成し、署名・押印をもらいました。聴取の様子は、全て録音を取りました。その後、本人の同意を得て自宅を訪れ、内部を撮影し、着服したお金で購入した家電や子供の教材、各種支払いの内容が分かるカード明細や領収書等の書類、質札等を受領し、個人名義の預貯金通帳の開示も受けて写しを取得しました。また、会社の会計帳簿、請求書、伝票類、注文書、現金出納帳、仕入元帳などの客観証拠を整理し、質店や取引先からも事情聴取するなどして、会社での商品の購入事実の証拠、商品の質入れの証拠、代金支払い済みであることの証拠、着服した現金ないし換金して得た現金の使い道の分かる証拠、これらの証拠を確保した上で、警察に刑事告訴の相談をしました。警察において捜査に着手し、会社においては、業務上横領を証明する証拠は十分に確保できたことを確認の上、当該従業員を懲戒解雇処分にしました。その後、当該従業員は警察に逮捕され、着服した現金を費消した先が判明した限度の金額と、質入れして換金したことの裏付けが取れた金額の限度で起訴がなされて裁判となりました。元従業員には資力がないのか、積極的な賠償の申し入れがなされなかったため、こちらから損害賠償請求をして交渉した結果、親から借り入れて一部の弁済がなされましたが、残額の支払いについて納得できる提案がなかったことから、民事訴訟も合わせて提起しました。結局、刑事裁判では、初犯ということもあり執行猶予付きの有罪判決となり、民事訴訟では刑事事件で起訴された限度の金額での判決を得ました。その後の更なる交渉により、判決で認められた金額に若干の上乗せをした上で、分割払いの合意を整え、返済をスタートさせることができました。

Lawyer Image
中村 浩士 弁護士からのコメント

元検事で、業務上横領罪の捜査や裁判を多数経験してきていますので、どのような証拠が必要なのか、業務上横領で警察に動いてもらうために必要な作業を熟知しています。業務上横領で起訴するためには、「着服した現金の使い道」が私的なものであることを突き止め、証拠を確保することが決定的に重要になってきます。なお、従業員に不正があった場合にも、その証拠をきちんと確保してから懲戒処分を下さないと、「証拠もないのに犯罪者扱いされて会社を辞めざるを得なくなった。パワハラだ。慰謝料と未払い給与を寄越せ。」などとして逆に訴訟を起こされて敗訴してしまう可能性があります。まず、迅速な事実確認と客観証拠の確保が決定的に重要です。その上で、懲戒処分をし、弁済させるのに一番相手にプレッシャーのかかる刑事告訴を受理してもらうことができれば、刑務所行きになってしまうのを防ぐために、必死に弁済をしてくるのが通常です。その過程において、判決が出る前に、一括で可能な限り弁済をしてもらうとともに、残額の返済合意を公正証書等できちんと交わすことが大切です。もし、納得できる交渉ができなければ、民事訴訟の提起も可能です。信頼を裏切った卑劣な行為に対しては、厳しい対応をしておかないと、再犯予防も困難です。今後の予防的観点も含め、是非お気軽にご相談ください。