2875.jpg
借金地獄の「かぼちゃの馬車」投資、なぜ賃料保証の掟破りが発生? 借地借家法を考察
2018年03月05日 09時50分

「かぼちゃの馬車」などのシェアハウス投資では、スルガ銀行などの金融機関から1億円超の融資を受ける一方、長期の家賃保証で実質負担はないという営業トークで、多くの会社員がオーナーとなって投資を始めました。その数は約700人と伝えられています。

神奈川県の30代男性が結んだ契約書には「家賃保証期間は30年」との記載がありました。建てたシェアハウスは運営会社のスマートデイズ(東京)が一括借上をする「サブリース」での契約で、決まった家賃収入があることにオーナーたちは安心していたようです。

ですが、スマートデイズが約束を破り家賃収入は減らされ、2018年1月にはゼロに。頼りにしていた家賃収入がもらえず、かたや借金返済の義務は残り、途方に暮れています。毎月50万円程度の返済を迫られる場合もあり、自己破産を真剣に考える人は少なくありません。

今回、「長期の家賃保証」という投資を始めるにあたって最も重要な約束が、いとも簡単に破られてしまいました。借地借家法32条は「借賃増減請求権」として、「当事者は将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる」と規定しますが、こうした約束破りは許されていいのでしょうか。弁護士に聞きました。

サブリースのイメージ

「かぼちゃの馬車」などのシェアハウス投資では、スルガ銀行などの金融機関から1億円超の融資を受ける一方、長期の家賃保証で実質負担はないという営業トークで、多くの会社員がオーナーとなって投資を始めました。その数は約700人と伝えられています。

神奈川県の30代男性が結んだ契約書には「家賃保証期間は30年」との記載がありました。建てたシェアハウスは運営会社のスマートデイズ(東京)が一括借上をする「サブリース」での契約で、決まった家賃収入があることにオーナーたちは安心していたようです。

ですが、スマートデイズが約束を破り家賃収入は減らされ、2018年1月にはゼロに。頼りにしていた家賃収入がもらえず、かたや借金返済の義務は残り、途方に暮れています。毎月50万円程度の返済を迫られる場合もあり、自己破産を真剣に考える人は少なくありません。

今回、「長期の家賃保証」という投資を始めるにあたって最も重要な約束が、いとも簡単に破られてしまいました。借地借家法32条は「借賃増減請求権」として、「当事者は将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる」と規定しますが、こうした約束破りは許されていいのでしょうか。弁護士に聞きました。

サブリースのイメージ

●サブリースなら「賃料減額請求できない」と考えることも可能

「借地借家法32条は、経済事情の変動などにより家賃の額が不相当となった場合は、賃料の増額又は減額を請求することができると定めていますが、本件で問題になる賃料減額請求については、賃貸人(会社員などオーナー)を保護するために契約で減額請求できないと定めても、その定めは無効とされます。

しかし、いわゆるサブリース契約の場合、不動産の専門業者である賃借人が賃貸人を契約関係に引き込むことや賃借人を保護する必要性は薄いことから、一定期間、家賃を減額しない(家賃保証)との定めをしている場合にその定めは無効とならず、賃借人(業者)からの賃料減額の請求はできないと考えることもできます」

ーー裁判所はどのように考えているでしょうか

「最高裁は、サブリース契約の場合でも、たとえ一定期間、家賃を減額しないとの定めをしていても、賃借人は借地借家法32条により、賃料減額を請求することができるとの立場を取っています」

●借り手である業者が、貸し手であるオーナーを巻き込む特殊な構造

ーーサブリースには賃借人が賃貸人を引き込むという特性があります

「はい。サブリース契約の場合、オーナーと運営会社の賃貸借契約は実質的には運営会社の転貸事業の一部であり、オーナーがその転貸事業のために多額の資本を投下(建設資金の借入など)しています。ですから、それらの事情や、賃料額を決める際に賃貸人と賃借人が考慮した事情も、賃料減額が認められるかを判断するに当たって考慮すべきとされています。

これは、業者である賃借人が賃貸人を引き込み、賃貸人が多大な経済的負担をするというサブリース契約の特殊性に配慮したものであると言えます」

ーー民事上、どのような請求が可能でしょうか

「サブリース契約において、業者である賃借人から支払賃料を減額されたオーナーとしては、賃貸借契約に至る経緯、家賃保証、オーナーにも一定収益があることを前提として賃料額を決定したこと、オーナーの経済的負担(月々の返済額)などを主張して、業者が一方的に主張した賃料額は無効で、賃料が減額されていないことの確認や未払い賃料を請求していくことが可能であると考えられます。

ただし、先ほど述べたように、サブリース契約においても賃料減額請求自体は排斥されませんので、裁判所が賃料の減額を認める可能性はあります。しかし、その場合でも、オーナーが一定程度の収益が得られる程度までの減額にとどまると考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る